*2000年までのいくつかのミュージカル作品から、ドラァグクイーンが日本の世間が持つLGBTイメージに影響を与えた可能性を見いだし、今後のLGBTのメディア表現について考える。
あなたはLGBTについてどのようなイメージを持っていますか?人にイメージを植え付けるものは沢山あるでしょう。親、友人、学校の先生、本やテレビ、そしてインターネットなどなど。その中で、私は"イメージを含む情報を提供する"というセンシティブな仕事も担う、”メディア”の表現に興味を持っています。過去の表現を経て、現在・未来にはどのようにLGBTを描くことが求められるのでしょうか。
今回は、テレビや漫画等多くあるメディアの中でも、舞台作品、特にミュージカル作品の一部について、紹介し、まとめていきます。ここで取り上げるのは、主に(オフ)ブロードウェイの作品で、日本でも上演歴のある作品なので、ご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
①La Cage aux Folles
南フランスのナイトクラブ「ラ・カージュ・オ・フォール」が舞台。クラブの支配人であるジョルジュと「ザザ」ことアルバンは長年夫婦として連れ添ってきた。ザザはクラブトップの”美女”である。ある日、息子と
して育ててきたローランがナイトクラブ取り締まり派の娘との結婚を言い出した!そこから始まるドタバタコメディ。1973年製作の舞台が基になっている。
登場するのは、アルバン。
https://www.youtube.com/watch?v=PAlF9aAXGqw
とにかく”女性らしい”アルバンが、コミカルに描かれている。女性的な動きに高い声。ナイトクラブということもあって衣装もとにかく派手。
②RENT
1988年12月24日のニューヨーク・イーストヴィレッジが舞台。ゲイやレズビアン、ヘロイン、HIV、貧困、愛、死など様々なテーマが盛り込まれている。楽曲の多彩さや作品にまつわる伝説も相まって熱狂的なファンも多い作品。トニー賞では10部門にノミネートされ、4部門を受賞した。
登場するのは、
https://www.youtube.com/watch?v=gBo9L82LXf4&index=13&list=RDOlVBOxVCjCU
大学講師でハッカーのコリンズ(ゲイ)。渋め。落ち着いた男性の印象。
ストリートドラマーでドラァグクイーンのエンジェル(ゲイ)
https://www.youtube.com/watch?v=D0QfCIQgD94
アングラパフォーマーのモーリーン(バイセクシャル)。性的に奔放な印象。
ハーバード大卒エリート弁護士のジョアン(レズビアン)。真面目な女性。短い髪、パンツスーツ姿。なんとなく男性的に見えなくもない。
③Kinky Boots
2005年に公開された同名のイギリス映画を舞台化した作品で、1999年に製作されたドキュメンタリーが基になっている。楽曲はすべてシンディ・ローパーが手がける。トニー賞では13部門にノミネートされ、ミュージカル作品賞、オリジナル楽曲賞を含む6部門を受賞。現在、三浦春馬・小池徹平で上演中。秋には来日キャストでの公演も。
ドラァグクイーン・ローラと堅気な靴屋のチャーリーが互いに理解を深めていき、理想のキンキーブーツを作り上げるというお話。
登場するのはドラァグクイーンのローラ。
https://www.youtube.com/watch?v=_uKqDUyeeEI
性別に対する考えがはっきりしているよう。確固たる自信を持っているように見えます。
(過去にまつわるエピソードは是非見て楽しんでみてください!)
周りのダンサー達もとってもセクシー。
④bare
アメリカの全寮制高校を舞台にしたオフ・ブロードウェイミュージカル。同性愛を中心に、ドラッグ・セックス・宗教・マイノリティ(コンプレックス)などを扱ったインパクトの強いポップ・オペラ(ロックミュージカル)である。
2000年10月にロサンゼルス ハドソン・シアターにて幕を開け、NYのオフブロードウェイへ進出。更に、カナダ・オーストラリア・イギリス・ベルギー・韓国へと上演の足を広げ、世界中でファンを増やしている。ロサンゼルス最優秀作曲賞、最優秀ミュージカル賞他、数多くの賞を受賞した。
ピーター
繊細でもろい、でもまっすぐな少年。女の子に憧れる時期もあり、親にカトリック系の学校に入れられる。周囲にカミングアウトできない事に苦しむ。
以上、4作品をご紹介しました。
気が付くと、4作品中2作品に”ドラァグクイーン”が登場していました。(ザザもパフォーマーという点で似ています。)
・ドラァグクイーンとは?(以下、wikipwdiaより引用。)
ドラァグクイーンの起源は、男性の同性愛者が性的指向の違いを超えるための手段として、ドレスやハイヒールなどの派手な衣裳を身にまとい、厚化粧に大仰な態度をすることで、男性が理想像として求める「女性の性」を過剰に演出したことにあるといわれる。
(中略)
MtF のトランスジェンダー(肉体は男だが心は女である人)が女物の服を着るのは「女性になる」または「女性として見られる」ことが目的であるのに対し、ドラァグクイーンのそれは「女性のパロディ」あるいは「女性の性を遊ぶ」ことを目的としている点が大きく異なる。
ドラァグクイーンが、LGBTイメージへ与えた影響はとても大きいと思います。例えば、オネエであったり、マツコデラックスさんであったりがバラエティなどでも露出が多いため、その印象が強くついている方も多いでしょう。(ちなみに、他に有名なものと言えば、”新宿二丁目”だろう。)
今多くの人が持っているLGBTイメージは、サブカルチャーの一人歩きの産物なのではないのでしょうか。メディアが悪ノリをしたというよりは、メディアが扱いやすい文化(キャラクター)がすでに存在していただけのではないかと私は思います。
ただし、そういった人ばかりではありません。「すぐ側で、みんなと同じように生きている」ということを受け入れてほしいと願っている人もいます。(先に挙げた作品では「bare」のピーターが顕著にそうでした。)
今後、どういう表現が求められているのでしょうか?また、どんな姿を伝える事が求められているのでしょうか?先ほど挙げた作品達は、ほぼ2000年までの海外の作品でした。それなら、一方で、マツコ・デラックスさん、「トランジットガールズ(2015年)」、irodori、レインボーパレード、パートナーシップ条例等々、2000年以降の日本に存在するものに、どのような目が向けられているのでしょうか。
貴重な時間を割き、お読み下さりありがとうございました!